一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

題:  地上で     草野 信子   帰ってきた日の夜 男は二度ベットから転がりおちた それまでの八日間 無重力の中で眠っていたから   宇宙飛行士の妻が語った その話が好きだ 宇宙から見る地球に国境線はなかったと 男 …

一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

題:  会社の人事  中桐 雅夫   「絶対、 次期支店次長ですよ、あなたは」 顔色をうかがいながらおべっかを使う、いわれた方は相好をくずして、 「まあ、 一杯やりたまえ」と杯をさす。   「あの課長、人の使い方をしらん …

一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

題: 自分の感受性くらい   茨木 のり子   ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて   気難かしくなってきたのを 友人のせいにするな しなやかさを失ったのはどちらなのか   苛立 …

くどう なおこ 詩集

題: 恋するくじら くじらは独り言をいうようになった。 好きなひとができたからだと思う。 好きなひとができると、どうして独り言をいったり鏡をみたりしてしまうのだろう。 夢も、色つきの長いのを見るようになる。   「きっと …

日本一 心のこもった 恋文   秋田県二ツ井町編

題:  天国のあなたへ   柳原タケ 秋田県・80歳 娘を背に日の丸の小旗をふって、あなたを見送ってから、もう半世紀がすぎてしまいました。 たくましいあなたの腕に抱かれたのは、ほんのつかの間でした。 三二歳で英霊となって …

日本一短い 「母」 への手紙 一筆啓上 福井県丸岡町

  ・ お母さん、雪の降る夜に私を生んで下さってありがとう。 もうすぐ雪ですね。 ・ あと10分で着きます。手紙よりさきにつくと思います。あとで読んで笑ってください。 ・ 「私、母親似でブス。」娘が笑って言うの。私、同じ …