一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

題:  せみ    木村 信子薯 せみは たった一週間の命のために 永い年月、土の中で暮らさなければはらない というけれど 土の中の年月こそ せみの本当の命のよろこびかもしれない 地上のよろこび、なんて思うのは 人間のか …

一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

題:  地上で     草野 信子   帰ってきた日の夜 男は二度ベットから転がりおちた それまでの八日間 無重力の中で眠っていたから   宇宙飛行士の妻が語った その話が好きだ 宇宙から見る地球に国境線はなかったと 男 …

一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

題:  会社の人事  中桐 雅夫   「絶対、 次期支店次長ですよ、あなたは」 顔色をうかがいながらおべっかを使う、いわれた方は相好をくずして、 「まあ、 一杯やりたまえ」と杯をさす。   「あの課長、人の使い方をしらん …

一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

題: 自分の感受性くらい   茨木 のり子   ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて   気難かしくなってきたのを 友人のせいにするな しなやかさを失ったのはどちらなのか   苛立 …

くどう なおこ 詩集

題: 恋するくじら くじらは独り言をいうようになった。 好きなひとができたからだと思う。 好きなひとができると、どうして独り言をいったり鏡をみたりしてしまうのだろう。 夢も、色つきの長いのを見るようになる。   「きっと …