13回の登山失敗『多くを学んだ』

 

世界で14座ある8千メートル峰を史上初めて完登した登山家。ラインホルト・メスナーさん(66才)=イタリア=が、このほど来日した。

14座最初の山 ナンガ・パルバット(8.126㍍)で経験した奇跡の経験を描いた山岳映画『ヒマラヤ・運命の山』が、8月の上旬日本で公開される。

原作者としてパキスタンの現地ロケにも同行しそうで、映画の魅力やヒマラヤへの思いを語った。

 

メスナーさんはアルプスの高峰に囲まれた南チロル出身。子どもの頃から弟のギュンターさんと岩登りに熱中した。 

1970年、『陥落不落』されたナンガ・パルバットの未踏の岩壁ルートに挑んだ遠征隊に兄弟で参加した。 2人は初登攀に成功したが 、弟は高山病で動けなくなり、山頂付近でビバーク。救援隊もこない中、危険なルートで下山したが、弟を雪崩で亡くし、本人も足に思い重傷を負い。地元の村人に助けられて生還した。

 

この遠征後、弟の無念を晴らすべくプロの登山家としてヒマラヤで華々しい活躍を続けた。

78年のエベレスト(8848㍍)登山は、人類初の無酸素登頂に成功し、登山界の常識を覆した。当時 医師から『自殺行為』と批判されたが、『酸素ボンベに頼らず最高峰の頂を極めたかった』。

 

登山の本質である『未知への挑戦。より困難さへの挑戦』を追求してきた。14座完登もすべて無酸素登頂だ。 登山だけでなく、南極の徒歩横断やヒマラヤでの雪男捜査など大自然への好奇心は旺盛だ。

登山界のスパースターと評される。『8千メートル峰の31回挑み、13回は登頂出来なかった。だが13回の失敗から多くを学んだ』と振り返った 

2011年 7月26日 朝日新聞 (近藤幸雄)