世界を、こんなふうに見てごらん  動物行動学者 日高敏隆 著 

h23214-2.jpgいきものとおしゃべりするには、観察するのがいちばんだ。

子どもの頃、ぼくは、虫と話がしたかった。

おまえはどこに行くの。何を探しているの。

虫は答えないけれど、いっしょうけんめい歩いて行って、

その先の葉っぱを食べはじめた。

そう、おまえ、これが食べたかったの。

言葉の代わりに、見て気がついていくことで、

その虫の気持ちがわかる気がした。

すると可愛くなる。うれしくなる。

それが、ぼくの、いきものを見つめる原点だ。

どうやって生きているかを知りたいのだ。

おまえ、こんなことしているの。

そうなの、こういうふうに生きているの。

その物語がわかれば、すごく親しくなれる。

 

みな、ようよう今の環境に適応して生きている。

生きていることへの深い共感は、そうやって生まれてくる。

 

世界を、こんなふうに見てごらん。

この本を、これからの少年少女と大人に贈る。

人間や動物を見るときのぼくなりのヒントをまとめたものだ。

生きているとはどういうことか、

豊かな見方をするといいと思う。