城山の思いで

 高尾山周辺の山の「へそ」にあたる「城山」に登るたびに思い出すことがあるb-onegai.gif・・。

それは夫婦の夢であった「子供を連れての初めての山行」であった・・神田のスポーツ店でやっと探しあて買い求めた背負子に長女「菜穂子」8ケ月を乗せて・・さっそうと出かけた。当時の背負子はおんぶとは逆向きになるので私の後方に寿子さんが歩き、子供をあやしながらの山行となった。後に続く登山者の中には「ブッス~とした子供」を笑わせようと声を掛けてくれるが一向に楽しそうな顔をしない愛嬌のない娘にがっかりした思い出である。

このころの城山の山頂は木材の切り出し後に植林した禿山であった。遠くにそびえ立つ富士山と湖面がキラキラ光る相模湖を望みながら、「きれいだね~」と娘に話しかけるが・・お弁当の鳥のから揚げをペロッと食べた後は、気持ち良い風に吹かれ寝ているばかりでちっとも反応がない。帰りに新宿のデパートの食堂でうどんをごちそうしたらすごい勢いで食べ始めた。寿子さんがちょっと横から味見をしたら周りのお客も驚くほど大声で泣いた。・・たぶん、背負子の揺れにお腹が減り過ぎて「ふてくされていた」と思わずガッテン。

その娘は、1年8ケ月で短い生涯を突然終えてしまった。44年前の出来事であった・・。

いまでは・・山頂で見かける小さな子供たちの元気な姿を追いながら・後に続く若いパパ・ママ達に・・・「いい思い出を作ってね~」と心の中でエールを送り続けているb-ganba.gif・・。