2010/8/18 (水)

求めない  加島 祥造

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:07:46

h22818.jpg  

求めない----

すると

ひとの言うことが前より

よく分かるようになる

そして

ひとの話をよく聞くようになる

すると

ひとは

とても喜ぶものだよ

求めない----

すると

ひとは安心して君によってくる

求めない----

すると

ひとは君に心を向ける

求めない----

すると

ひととの

調和が起こる

求めない----

すると

ひとの心が分かりはじまる

立って、利害損得でない目で見るからだ

2010/8/6 (金)

超訳 ニーチェの言葉

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 14:15:14

h22528.jpg 題:友について  必要な鈍さ

 いつも敏感で鋭くある必要はない。

特に人との交わりにおいては、

相手のなんらかの行為や考えの動機を見抜いていても

知らぬふうでいるような、一種の偽りの鈍さが必要だ。

 

 また、 言葉をできるだけ好意的に解釈することだ。

 そして、相手をたいせつな人として扱う。

しかし、こちらが気を遣っているふうには決して見せない。

相手よりも鈍い感じでいる。

 これらは社交のコツであるし、人へのいたわりともなる。  

 

 

2010/8/3 (火)

くち  まど・みちお詩集  工藤直子 編

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 14:29:24

くち  まど・みちお著

 

いわなかたことは

いったことの

たいがい いつも  

なっばいかだ

 

それに

いったことは

たいがい いつも

いうまでも なかったことだ

 

で  くちも

くちで ありうるわけか

こんなにして

ぐちる ときだけは

くちらしい くちで

 

2010/7/26 (月)

命のリレー

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 11:05:18

『自分の番』 詩人相田みつお

うまれかわり 死にかわり

永遠の過去のいのちを

受けついで

いま自分の番をいきている

それがあなたに いのちです

それがわたしの いのちです

 

現代人は、あまりにも生きている人間ばかりに焦点をあてていないでしょうか。

そして、死者と共に生きていることを忘れている用です。  (天台ブックレットNO57から引用)

2010/5/14 (金)

太陽と地球

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 14:38:54

h22423.jpg 太陽と地球  まど・みちお 著

 

まだ若かったころのこと 太陽は気がつきました

わが子 地球について ひとつだけ どうしても

知ることのできないことが あるのを・・・

 

それは 地球の夜です

地球の夜に どうか安らかな眠りがありますように

どうか幸せな夢があふれますように

祈りをこめて 太陽は 地球のそばに 月をつかわしました

地球の夜を 見まもらせるために 美しくやさしい 光をあたえて

 

今では もう 若いとも言えませんが

太陽は忘れたことがありません

 

地球の 笑顔が どんなに 安らかであるかを

夜どおし 月に 聞くことを・・・

2010/4/30 (金)

まどさん 100才100詩集

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:30:01

h22423.jpg題: 水道のせん  まど・みちお著

水道のせんをひねると 水が出る

水道のせんさえあれば

いつ どんなところでも

きれいな水が出るものだというように

 

とおい谷間の取入れ口も

山のむこうの浄水場も

山の上の配水池も

ここまでうねうねと土の中を

はいめぐってきているパイプも

それらのすべてを つくった人も

いっさい関係ないかのように

 

牛乳びんさえあれば

牛乳がやってくるかのように

電灯のたまさえあれば

電灯がともるかのように

水道せんひねると 水が出る

 

 

題: どこの どなた   まど・みちお著

トイレの スイセン

ベランダの ラベンダー

うんそうやの ハコベ

すいげんちの ミズヒキ

だいくさんちの カンナ

そっこうじょうの カスミソウ

ていりゅうじょうの マツ

しゅうかいじょうの シュウカイドウ

しょくぎょうしょうかいじょうの クチナシ

ぼうりょくだんのいえの ブッソウゲ

ろうじんホームの ヒマ

しんこんさんちの フタリシズカ

いんきょべやの ヒトリシズカ

しあいじょうの ショウブ

じこげんばの げんのしょうこ

ぐらんどの ハシリドコロ

ごみすてばの クサイ

おかしやの アカシヤ

あめやの アヤメ 

 

 

 

 

 

 

まどさん 100才100詩集

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:24:43

h22423.jpg 題: おみやげ

なんだか 足が軽いと思ったら

さっき電車の中で

知らないよその赤ちゃんが

笑いかけたのだった

わたしを見て

嬉しくてたまらないように

 

その笑い顔を

いつのまにか 胸にかかえていて

それで 夜道の足もとを

てらすようにしながら

わたしは急いでいるのだった

 

父がいなくなった家で

ひっそり 待っている母に

そのおみやげを

はやく見せてあげたくて

2010/4/12 (月)

ポケット詩集 Ⅲ    童話屋

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:43:16

h2246-5.jpg題:  昨日はどこにもありません   三好 達治

 

昨日はどこにもありません

あちらの箪笥の抽出しにも

こちらの机の抽出にも

昨日はどこにもありません

 

それは昨日の写真でしょうか

そこにあなたの立っている

そこにあなたの笑っている

それは昨日の写真でしょうか

 

いいえ昨日ではありません

今日を打つのは今日の時計

昨日の時計はありません

今日を打つのは今日の時計

 

昨日はどこにもありません

昨日の部屋はありません

それは今日の窓掛けです

それは今日のスリッパです

 

今日悲しいのは今日のこと

昨日のことではありません

昨日はどこにもありません

今日悲しいのは今日のこと

 

いいえ悲しくはありません

何で悲しいものでしょう

昨日はどこにもありません

何が悲しいものですか

 

昨日はどこにもありません

そこにあなたが立っていた

そこにあなたの笑っていた

昨日はどこにもありません 

 

 

 

 

2010/4/9 (金)

ポケット詩集 Ⅲ  童話屋

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:02:29

h2246-5.jpg題:  父に    江國 香織

 

病院という

白い四角いとうふみたいな場所で

あなたのいのちがすこしづつ削られていくあいだ

わたしはおとこの腕の中にいました

 

たとえばあなたの湯呑みはここにあるのに

あなたはどこにもいないのですね

 

むかし

母がうっかり茶碗を割ると

あなたはきびしい顔で私に

かなしんではいけない

と 言いましたね

かたちあるものはいつか壊れるのだからと

かなしめば ママを責めることになるからと

あなたの唐突な

-そして永遠の--

不在を

かなしめば それはあなたを責めることになるのでしょうか

 

あの日

病院のベッドで

もう疲れたよ

と言ったあなたに

ほんとうは

じゃあもう死んでもいいよ

言ってあげたかった

言えなかったけど。

そのすこしまえ

煙草をすいたいと言ったあなたにも

ほんとうは

じゃあもうすっちゃいなよ

言ってあげたかった

きっともうじき死しんじゃうんだから

と。

言えなかったけど。

 

ごめんね

さようなら、

私も、じきにいきます。

いまじゃないけど。

2010/4/7 (水)

ポケット詩集 Ⅲ    童話屋

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:31:13

h2246-5.jpg題:  なにもそうかたを・・・・     高橋 元吉

なにもそうかたをつけたがらなくてもいいではないか

なにか得態の知れないものがあり

なんということなしにひとりでにそうなってしまう

 ということでいいではないか

咲いたら花だった  吹いたら風だった

それでいいではないか

 

 

2010/4/2 (金)

一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:57:07

h22324-1.jpg題:  せみ    木村 信子薯

せみは

たった一週間の命のために

永い年月、土の中で暮らさなければはらない

というけれど

土の中の年月こそ

せみの本当の命のよろこびかもしれない

地上のよろこび、なんて思うのは

人間のかってな想像だ

じぶんの羽を

得たいの知れないものと、とまどっているかもしれない

土の中の生活が

あんまり長かったので

高所恐怖症なのかもしれない

あんなにはげしく鳴いているのは

 

 題: 夕焼け    工藤 直子

あしたは かならず

晴れるに ちがいないなあ

あしたも わたしは

たしかに 生きるだろうなあ

あしたこそ

なにかを みるかなあ

きっと そうであり

そうに ちがいなく

そうと 思いたい

・・・・・・・・・・

そんなふうに眺められる

夕焼けが あった

 

題:  ダイアモンド    寺山 修司

 

木という字を一つ書きました

一本じゃかわいそうだから

と思ってもう一本ならべると

林という字になりました

淋しいという字をじっと見ていると

二本の木が

なぜ涙ぐんでいるのか

よくわかる

ほんとうに愛しはじめたときにだけ

淋しさが訪れるのです

2010/3/24 (水)

一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 15:03:21

h22324-1.jpg題:  地上で     草野 信子

 

帰ってきた日の夜

男は二度ベットから転がりおちた

それまでの八日間

無重力の中で眠っていたから

 

宇宙飛行士の妻が語った

その話が好きだ

宇宙から見る地球に国境線はなかったと

男が語った話よりも

 

地上に生み落とされた

小さないきものは

重力に繋がれて だからこそ

やさしく交わることができることを

そっと思い出させてくれた

 

雨の音が聞こえる

遠い夜の林でブナの実が落下している

そしていま

わたしのうえに重なるひとの

やわらかな重量

 

宇宙飛行士の妻が語った話が好きだ

闇に向かって

わたしに目を見開かせるのは

(人間には国境がない)

美しい観念ではなく

わたしの胸を受けとめる胸

その奥の鼓動だ

一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 14:49:43

h22324-1.jpg題:  会社の人事  中桐 雅夫

 

「絶対、 次期支店次長ですよ、あなたは」

顔色をうかがいながらおべっかを使う、いわれた方は相好をくずして、

「まあ、 一杯やりたまえ」と杯をさす。

 

「あの課長、人の使い方をしらんな」

「部長昇進はむりだという話だよ」

日本中、会社ばかりだから、飲み屋の話も人事の事ばかり。

 

やがて別れてみんな一人になる、

早春の夜風がみんなの頬をなでていく、

酔いがさめてきて寂しくなる、

煙草の空き箱や小石をけとばしてみる。

 

子供のころは見る夢があったのに

会社にはいるまでは小さな理想もあったのに。

一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 14:29:38

h22324-1.jpg題: 自分の感受性くらい   茨木 のり子

 

ぱさぱさに乾いてゆく心を

ひとのせいにはするな

みずから水やりを怠っておいて

 

気難かしくなってきたのを

友人のせいにするな

しなやかさを失ったのはどちらなのか

 

苛立つのを

近親のせいにするな

なにもかも下手だったのはわたし

 

初心消えかかるのを

暮らしのせいにするな

そもそもが ひよわな志にすぎなかった

 

駄目なことの一切を

時代のせいにはするな

わずかに光る尊厳の放棄

 

自分の感受性くらい

自分で守れ

ばかものよ

2010/3/19 (金)

くどう なおこ詩集   NO2

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 11:47:08

題: てつがくのライオン

 

ライオンは「てつがく」が気に入っている。

かたつむりが、ライオンというのは獣の王で哲学的な様子をしているものだと教えてくれたからだ。

きょうのライオンは「てつがくてき」になろうと思った。

哲学というのは坐りかたから工夫した方がよいと思われるので,尾を右にまるめて腹ばいに坐り、前肢を重ねてそろえた。

首をのばし、右斜め上をむいた。尾が右で顔が左をむいたら、でれりとしてしまう。

 

ライオンが顔をむけた先に、草原が続き、木が一本はえていた。 ライオンは、その木の梢をみつめた。

梢の葉は風に吹かれてゆれた。

ライオンのたてがみも、ときどきゆれた。(だれか来てくれるといいな。「なにしているの?」と聞いたら「てつがくしているの」って答えるんだ)

ライオンは、横目で、だれか来るのを見はりながらじっとしていたが誰も来なかった。

 

日が暮れた。 ライオンは肩がこってお腹がすいた。(てつがくは肩がこるな。お腹がすくと、てつがくはだめだな)

きょうは「てつがく」はおわりにして、かたつむりのところへ行こうと思った。

 

「やあ、かたつむり。ぼくはきょう、てつがくだった」

「やあ、ライオン。それはよかった。で、どんなだった?」

「うん。こんだった」

ライオンは、てつがくをやった時のようすをしてみせた。

さっきと同じように首をのばして右斜め上をみると、そこには夕焼けの空があった。

「あゝ、なんていいんだろう。ライオン、あんたの哲学は、とっても美しくとっても立派」

「そう?・・とても・・何だって? もういちど云ってくれない?」

「うん。とっても美しくて、とっても立派」

「そう、ぼくのてつがくは、とっても美しくてとっても立派なの? ありがとうかたつむり」

 

ライオンは肩こりもお腹すきも忘れて、じっとてつがくになっていた。 

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