くじけないで 柴田トヨ 著
風と陽射しと私
風が
硝子戸を叩くので
中に入れてあげた
そしたら
陽射しまで入って来て
三人で おしゃべり
おばあちゃん
独りで寂しくないかい?
風と陽射しが聞くから
人間 所詮は独りよ
私は答えた
がんばらずに
気楽にいくのがいいね
みんなで笑いあった
昼下がり
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風と陽射しと私
風が
硝子戸を叩くので
中に入れてあげた
そしたら
陽射しまで入って来て
三人で おしゃべり
おばあちゃん
独りで寂しくないかい?
風と陽射しが聞くから
人間 所詮は独りよ
私は答えた
がんばらずに
気楽にいくのがいいね
みんなで笑いあった
昼下がり
あなたに Ⅱ
追いかけて
愛した人を
苦しめるより
忘れる勇気を
持つことが
大切よ
後になると
それがよくわかるの
あなたのこと
心配してくれている
人がいる
あなた気づかないだけ
母 Ⅰ 柴田トヨ
亡くなった母と同じ
九十二歳をむかえた今
母のことを思う
老人ホームに
母を訪ねるたび
その帰りは辛かった
私をいつまでも見送る
母
どんよりした空
風にゆれるコスモス
今もはっきりと覚えて
いる
母 Ⅱ
母の後を
風車を かざしながら
追いかけて行く
陽は暖かかった
振り向く母の笑顔に
安堵しながら
早く大人になって
孝行したい
そう思ったものだ
母の歳をとうに越して
今 私は
初夏の風に
吹かれている
若い母の声が聞こえる
手と心 谷川 俊太郎 (H23.1.18 朝日新聞より)
手と手を重ねる
手を膝に置く
手を肩にまわす
手で頬に触れる
手が背を撫でる
手と心は仲がいい
手がまさぐる
手は焦る
手が間違える
手は迷走し始めて
手がひどく叩かれる
手はときに早すぎる
心よりも
かつて小説に連載された井上靖の小説『氷壁』は、世に登山ブームを巻き起こした。読まれている方もおられようが、主人公の勤め先の上司が、なかなか味わい深い。穂高岳の氷壁をめざす部下を案じて言う
『登山家というものも、いい加減なところでやめないと、いつかは、命を棄てる事になると思うのだ。危険な場所へ自分をさらすんだからね。確率の上から言ったって、そういうことになる』。 時は流れて、今なら『危険な場所』の最たるものは8千メートルを超す山々だろう
酸素は平地の3分の一しか内。 『死の地帯』と呼ばれ、自然が人間を拒否している場所だ。 世界に8千メートル峰は14座あるが、すべてを登った日本人はまだいない。 10座に挑んでいた名古屋の田部治さん(49)が先月、ヒマラヤで遭難した。
登山に限らず、知名度と実力とがイコールでないことはままある。 田辺さんは逆に、広く知られた人ではなかったが実力は指折りだった。 世界的な難峰や難ルートにいくつも足跡を残してきた。
謙虚な人手もあった。6年前、やはり10座に、やはり49歳で落命した群馬の名塚秀二さんの『偲ぶ会』で出会ったことがある。『登山には拍手も喝采もない。そこがいいんです』と言っていたのが印象深い。淡々とひたむきだったその姿が、大雪崩に消えた。
14座の完登者は世界で20余人を数える。 日本では12座の竹内洋岳さん(39)が最も近い。 一流の登山家ほど『命知らず』の行動から遠いものだ。 『氷壁』の上司の老婆心は胸に封じつつ、だれであれ無事の達成を祈る。
PS この記事を読んだ後、『氷壁』を読み返しました。最近では山岳小説 谷 甲州著 『加藤文太郎伝 単独行者』を読み終えました