2011/1/18 (火)

こころ 1月の詩   谷川 俊太郎

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 9:07:31

手と心   谷川 俊太郎 (H23.1.18 朝日新聞より)

 

手と手を重ねる

手を膝に置く

手を肩にまわす

手で頬に触れる

手が背を撫でる

手と心は仲がいい

 

手がまさぐる

手は焦る

手が間違える

手は迷走し始めて

手がひどく叩かれる

手はときに早すぎる

心よりも

 

 

 

2011/1/17 (月)

天声人語から

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:23:34

かつて小説に連載された井上靖の小説『氷壁』は、世に登山ブームを巻き起こした。読まれている方もおられようが、主人公の勤め先の上司が、なかなか味わい深い。穂高岳の氷壁をめざす部下を案じて言う

『登山家というものも、いい加減なところでやめないと、いつかは、命を棄てる事になると思うのだ。危険な場所へ自分をさらすんだからね。確率の上から言ったって、そういうことになる』。 時は流れて、今なら『危険な場所』の最たるものは8千メートルを超す山々だろう

酸素は平地の3分の一しか内。 『死の地帯』と呼ばれ、自然が人間を拒否している場所だ。 世界に8千メートル峰は14座あるが、すべてを登った日本人はまだいない。 10座に挑んでいた名古屋の田部治さん(49)が先月、ヒマラヤで遭難した。

登山に限らず、知名度と実力とがイコールでないことはままある。 田辺さんは逆に、広く知られた人ではなかったが実力は指折りだった。 世界的な難峰や難ルートにいくつも足跡を残してきた。

謙虚な人手もあった。6年前、やはり10座に、やはり49歳で落命した群馬の名塚秀二さんの『偲ぶ会』で出会ったことがある。『登山には拍手も喝采もない。そこがいいんです』と言っていたのが印象深い。淡々とひたむきだったその姿が、大雪崩に消えた。

14座の完登者は世界で20余人を数える。 日本では12座の竹内洋岳さん(39)が最も近い。 一流の登山家ほど『命知らず』の行動から遠いものだ。 『氷壁』の上司の老婆心は胸に封じつつ、だれであれ無事の達成を祈る。

 

PS この記事を読んだ後、『氷壁』を読み返しました。最近では山岳小説 谷 甲州著 『加藤文太郎伝 単独行者』を読み終えました

 

 

 

 

2010/9/27 (月)

完全な敗北   天台ブックレットNO58

Filed under: ホッとする詩, ホッとする記事 — hayakawa @ 16:49:06

完全な敗北  文:藤波 洋香 

 

私と母は仲の良い親子ではない。

どちらかとというと仲の悪い親子だと思う。それは性格が似すぎているからかもいれない。

どちらも自己中心的で、協調性に欠け負けず嫌いとなればうまく行くわけがない。

うまくいかない理由は他にもある。現在86才の母は、かつて中学校の社会科の教師であった。

子育て支援などという言葉のない時代に、母は私と弟を育てた。

といのは建前で、実際に私たちを育てたのは祖母だった。 母は祖母に子育てを丸投げしたのである。

母は、自分の子供よりも担任しているクラスの生徒のほうが大切だと公言してはばからなかった。

そういうだけあって、実によく生徒の面倒を見ていたし、又、生徒にも慕われ尊敬されていた。

しかし、母親としてはいろいろと問題もあった。高校生の弟は『我が家でいちばんデリカシーのないのはおふくろだ』という名言を残して姿をくらました。

 

時を経て母は退職してただの人となった。退職したあともよく教え子が訪ねてきた。

さらに時が経って母はアルツハイマー病を発症した。 足腰が丈夫で口が達者だが、やることは支離滅裂という病人になった。

『私は病気じゃない。誰にも迷惑をかけていないし、誰の世話にもならない』という母と

『いくら生徒に慕われたって、生徒があなたの老後の面倒をしてくれるわけじゃないでしょ』などと嫌みをいう私とのバトルは延々と続いた。

 

そうこうしているうちに、私の娘が大学を卒業することになった。私はぜひ卒業式に行きたいと思ったが、そのためにどうしても一泊する必要があった。

そうなると問題は母だった。自分の病気を認識していない母をショートステイに預けるのは、至難の業だったが、

友人の介護福祉士の『大丈夫よ、預けてしまえばなんとかなるわよ』とうい言葉に背中を押され、だましうち同様に母を預けた。

 

私は娘の晴れ姿を見て満足して帰宅し、母も無事のショートステイから戻ってきた。 後日、ケアマネージャーから母の『お泊まり会』の様子を聞いた。

その日、宿直のスタッフ達は、母が夜中にいなくなってしまうのではないかとかなりの危機感を持っていたらしい。

施設の責任者の女性は、一応帰宅したものの夜中に呼び出されるのを覚悟していたという。

そんな危機的状況を救ったのは、ひとりの女性スタッフだった。 彼女はたまたま母の教え子だった。

彼女は母の気持ちを落ち着かせるために中学校時代のアルバムまで持ち出して穏やかに母に語りかけたというのだ。

 

私はそのことを知ったとき唖然とし、完全に負けたと思った。

2010/9/8 (水)

画本 厄除け詩集 井伏鱒二

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 9:57:29

h2298-1.jpg    題: なだれ

 

峯の雪が裂け

雪がなだでる

そのなだれに

熊が乗っている

あぐらをかき

安閑と

莨(たばこ)をふかすような恰好で

そこに一ぴき熊がいる

 

 

h2298-1.jpg   題: つくだ煮の小魚

 

ある日 雨の晴れまに

竹の皮に包んだつくだ煮が

水たまりにこぼれ落ちた

つくだ煮の小魚達は

その一ぴき一ぴきを見てみれば

目を大きく見開いて

環になって互いにからみあっている

鰭(ひれ)も尻尾も折れていない

顎の呼吸するところには 色つやさへある

そして 水たまりの底に放たれたが

あめ色の小魚達は

互いに生きて返らなんだ

 

2010/8/25 (水)

求めない 加島 祥造

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:24:49

h22818.jpg加島 祥造著

求めないーーーー

なんて言葉をつらねて

あなたに聞いてもらうことを

私は求めている。

 

たしかにその通りだけれど

あなたが聞き捨てても

不平は言わない。

聞き入れられなくても

不満を持たず

悲しがらず

怒らずにいようとするーーー

 

そういう求めかただったら

我慢してもらえるかな。

2010/8/18 (水)

求めない  加島 祥造

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 17:07:46

h22818.jpg  

求めない----

すると

ひとの言うことが前より

よく分かるようになる

そして

ひとの話をよく聞くようになる

すると

ひとは

とても喜ぶものだよ

求めない----

すると

ひとは安心して君によってくる

求めない----

すると

ひとは君に心を向ける

求めない----

すると

ひととの

調和が起こる

求めない----

すると

ひとの心が分かりはじまる

立って、利害損得でない目で見るからだ

2010/8/6 (金)

超訳 ニーチェの言葉

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 14:15:14

h22528.jpg 題:友について  必要な鈍さ

 いつも敏感で鋭くある必要はない。

特に人との交わりにおいては、

相手のなんらかの行為や考えの動機を見抜いていても

知らぬふうでいるような、一種の偽りの鈍さが必要だ。

 

 また、 言葉をできるだけ好意的に解釈することだ。

 そして、相手をたいせつな人として扱う。

しかし、こちらが気を遣っているふうには決して見せない。

相手よりも鈍い感じでいる。

 これらは社交のコツであるし、人へのいたわりともなる。  

 

 

2010/8/3 (火)

くち  まど・みちお詩集  工藤直子 編

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 14:29:24

くち  まど・みちお著

 

いわなかたことは

いったことの

たいがい いつも  

なっばいかだ

 

それに

いったことは

たいがい いつも

いうまでも なかったことだ

 

で  くちも

くちで ありうるわけか

こんなにして

ぐちる ときだけは

くちらしい くちで

 

2010/7/26 (月)

命のリレー

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 11:05:18

『自分の番』 詩人相田みつお

うまれかわり 死にかわり

永遠の過去のいのちを

受けついで

いま自分の番をいきている

それがあなたに いのちです

それがわたしの いのちです

 

現代人は、あまりにも生きている人間ばかりに焦点をあてていないでしょうか。

そして、死者と共に生きていることを忘れている用です。  (天台ブックレットNO57から引用)

2010/5/14 (金)

太陽と地球

Filed under: ホッとする詩 — hayakawa @ 14:38:54

h22423.jpg 太陽と地球  まど・みちお 著

 

まだ若かったころのこと 太陽は気がつきました

わが子 地球について ひとつだけ どうしても

知ることのできないことが あるのを・・・

 

それは 地球の夜です

地球の夜に どうか安らかな眠りがありますように

どうか幸せな夢があふれますように

祈りをこめて 太陽は 地球のそばに 月をつかわしました

地球の夜を 見まもらせるために 美しくやさしい 光をあたえて

 

今では もう 若いとも言えませんが

太陽は忘れたことがありません

 

地球の 笑顔が どんなに 安らかであるかを

夜どおし 月に 聞くことを・・・